「戦犯」たちによる
代表選が始まる
菅内閣の閣僚たちに
首相の資格はない
上杉隆
2011.8.25
diamond
戦犯たちによる代表選が始まる。日本では「犯罪者」たちが政権をたらいまわしにしようとしている。
3.11の東京電力福島第一原発事故以降、菅内閣は、東電の情報隠蔽を追認し、放射能事故の対応を誤り続けるという失態を繰り返してきた。その結果、多くの国民が被曝し、世界に対しては、日本という国家の信頼を損なうことになった。
福島の子どもたちの多くが汚染に被曝し、7万人を超える住民がいまなお自らの土地と家を失ったままでの生活を余儀なくされている。何の罪も無い善良な国民を、不幸のどん底に叩き落した東京電力の事故の責任は重い。
原発事故の発生当日、緊急冷却装置が人為的に停止!
川内博史、原口一博両衆議院議員の粘り強い調査の結果によれば、事故発生当日、福島第一原発の緊急冷却装置が人為的に3度にわたって止められていたという。この信じがたい行為自体は、政府も、東電も認めている。問題は、なぜ、そのような愚かな行為をしたのかということだ。
装置を止めたのはあるひとりのオペレーターによるものだが、仮に、そうしたことをしなければ、メルトダウンも、メルトスルーも、その後の放射能の拡散も防げたかもしれない。それを考えれば明らかな人災、いやもっといえば犯罪である。言葉は強いが、テロ行為に匹敵する悪行である。
原口氏、川内氏は、繰り返しその理由を問い合わせている。にもかかわらず、この数ヵ月間、明確な回答は得られていない。
当初の東京電力の言い訳は、急激な冷却は、原子炉に危険を及ぼすという頓珍漢なものだった。実際は、そうしたことを回避するためにプログラミングがなされており、人為的な作業は不要なのである。
「私は、では、その緊急冷却装置の作業マニュアルをみせてくれと言ってきているんです。マイナス55度になるから止めた、というのは合理的な説明にならない。仮にそんな緊急装置であれば、日本にあるほかの原子炉も危険ということになる。説明が矛盾しているんです」
原口氏はこう語る。
「ひとりのオペレーターによる作業ミスが、日本に、いや人類史上最悪の原発事故をもたらしたとなるとやりきれない。それが事実かどうかを判断する上でも、菅内閣の面々こそ、当事者として調査をするべきではないか。
また、東京地検特捜なども、このときこそ、東京電力への捜査、少なくとも証拠の保全を行うべきではないか。」
前原前外相は菅内閣の「戦犯」筆頭格
誰一人責任を取ろうとしない原発事故を横目に、民主党代表選が行われる。そこに並ぶ候補予定者の名前は、信じがたいことに、戦犯ともいうべき人々である。
前原誠司前外相は、菅内閣の「戦犯」の筆頭格である。国土交通大臣として八ッ場ダムでしくじり、JALの対応で力を発揮できず、さらには尖閣ビデオの対応で、国家を裏切るような誤りを犯した。
さらに、外相としても、外国人やフロント企業からの違法献金という「政治とカネ」の最たる問題で辞任、政治家として責任を取ると宣言したばかりだった。
もっといえば、民主党代表時代の偽メール問題でも、ライブドア元社長の堀江貴文氏との裁判に負けたにもかかわらず、前原氏だけからは謝罪のことばすらない。
責任を取らず、責任から逃れ、責任を転嫁する彼のいったいどこが首相に相応しいというのか。
そうした彼の癖はまた、情報公開に逆行して、記者会見を縮小させたことと無関係ではない。彼の隠蔽体質は記者クラブメディアと共通するところだ。
3.11以降の発災以降、何もせず、何も発しなかった政治家だけが、マスコミの餌食とならずに済むのはそのためである。
その前原氏は、マニフェストの見直しを訴えている。マニフェストは国民との契約のはずだ。
ところが、日本では、なぜかそれを取り消そうとする勢力が持ち上げられ、約束を守ろうとする政治家が責められる。まったくもって理解に苦しむ限りだ。もはや民主国家の体をなしていない。
菅内閣の閣僚たちも「共犯」世界は原発事故の収束を注視
鹿野道彦農林水産大臣は、放射能の拡散を予測して農家や漁民、そして畜産家に適切な対応を指示できなかった日本の食文化の破壊者である。
次から次へと農産物を出荷停止にさせたばかりか、発表の遅れによる国民への内部被曝を誘発させてしまった。国民の食を預かる大臣としては失格である。にもかかわらず、彼が首相候補になることに異論はないという。
海江田万里氏は、経済担当相として失政を繰り返してきた。なぜ、東京電力に騙され続け、原発事故の対応を遅らせ、多くの国民を被曝させた「犯罪者」が首相になれるというのか。
財務大臣であった野田財務大臣も同様に資格を持たない政治家だろう。なにより、原発事故という最も喫緊のテーマを語ろうとしないのだ。それで「増税」や「大連立」を語っても説得力は無い。
なにより国民の最大の関心事は、放射能の飛散状況であり、それにともなう内部被曝による自らの健康と生活がどうなるかの一点である。
原子力マフィアのはびこる日本では鈍感な者が多いのかもしれない。だが、世界は、「増税」にも「大連立」にも注目していない。
注視しているのは、日本政府が対応をしくじった原発事故をどう収束させ、どう国際的な賠償を贖うかにしか関心が無いのである。
そうした意味では、菅内閣に関わった者はすべて人災を起こした「戦犯」である。犯罪者は責任を取らなければならない。共犯関係にある民主党議員が愚かな選択をしないことを祈る。
記事初出時、1ページ目第5段落に「川内博史、原口一博両衆議院議員の粘り強い調査の結果によれば、事故発生当日、福島第一原発の緊急冷却装置の電源が人為的に3度にわたって切られていたという。」との表現がありましたが、当該の装置は電気を動力源とするものではなく、事実と異なるため訂正させていただききました。(2011年8月26日)
報ステ出演もむなしい理念も
具体論もない前原候補
植草一秀
2011.8.26
uekusa
前原誠司氏が民主党代表選出馬を表明すると、早速テレビ朝日「報道ステーション」が単独出演の機会を与えた。しかし、番組への出演が前原氏にとって大きなマイナスに作用したことは間違いない。
番組を見た人は、前原氏が日本を担う力量をまったく持ち合わせていないことをはっきりと認識したに違いない。それほどに冴えない受け答えだった。そもそも、前原誠司氏が民主党代表候補として取り沙汰されること自体が不自然である。これまでの実績を踏まえれば、民主党代表に再び就任する資格などないことは明らかである。
テレビ番組での前原氏の受け答えは、あまりにも具体的内容に乏しいものであった。話の内容を要約すれば、国難に対処するには衆参ねじれ現象に対処することが必要で、そのためには自民党との大連立を模索するしかない。話の内容はこれしかなかった。
脱原発を20年間で実現するとの前言を守るのかとの質問に対しても、意味不明な説明を繰り返し、明言することもできなかった。日本の政治を担う明確な決意も、独自の信念、信条もまるで伝わらない、空っぽの中身を見事に浮かび上がらせるインタビューであった。
不自然ではあったが、当然とも思われたのは、古館伊知朗氏がまったく批判的な態度を示さなかったことだ。
衆参ねじれが政治停滞の原因だというが、前原氏はこの衆参ねじれをもたらしたのが何であるのかをまったく把握していない。円滑な国会運営を実現するために何が必要であるか。この点を、当初から的確に指摘していたのは小沢一郎民主党元代表である。
2009年8月総選挙で民主党が大勝した瞬間から、小沢一郎元代表は2010年7月参院選こそ、最重要の戦いになることを明確に指摘した。私も獄中からまったく同じ見解を表明した。
衆議院で圧倒的多数を確保しても、参議院での少数与党の状況を打破しなければ安定的な政権運営は実現しない。2010年7月参院選で勝利して初めて政権交代を実現した政権が安定的な政権運営を行えるようになる。このことを的確に認識し、その方向に力を注ぐことを指揮したのは小沢元代表である。
ところが、敵は民主党内部に潜んでいた。鳩山政権の
①対米隷属からの脱却
②官僚利権根絶
③政治と大資本の癒着排除
の基本方針に全面的に反対する対米隷属派が民主党内部に存在し、これらの勢力が普天間基地の辺野古への移設を誘導し、鳩山政権潰しに動いたのである。
その結果として鳩山内閣が総辞職に追い込まれたのだが、対米隷属勢力は、その機に乗じて民主党の実権を強奪して菅政権を樹立したのだ。この対米隷属派の中心に位置するのが、菅-仙谷-岡田-野田-前原-枝野-玄葉-渡部の8名であり、私はこれらの人々を民主党悪徳8人衆と呼んでいる。同時に民主党内対米隷属派を悪徳民主党、民主党の本来の主流派を正統民主党と表現して両者を区分している。
悪徳民主党が主導する菅直人政権は民主党政権マニフェストを廃棄し、突然、大増税の方針を政権公約に掲げた。主権者国民に対する背信行為である。主権者国民が菅内閣に不信任の意思を突き付けたのは当然のことだった。
菅政権は2010年7月参院選に大敗した。この結果、深刻な衆参ねじれが生じたのである。
この経緯を踏まえずに、衆参ねじれだから自民党との大連立だと主張する前原氏には、政党が選挙を通じて主権者国民と契約を結んでいる、つまり民意の負託を受けているという重大な問題に対する認識が欠落していると言わざるを得ない。
衆参ねじれ現象に直面するなら、参議院で野党に対する働きかけを強めて、民主党の方針に賛同する勢力を一人ずつ拡大させる努力を注ぐのが正しい道である。政権運営が困難であるから、主権者国民との契約を破棄して野党の主張にすり寄るというのは、主権者国民に対する背信行為である。
だが、民主党内対米隷属派=悪徳民主党の指向する政治の基本方針は民主党の基本方針に反している。もとより、自民党の政策方針と同一なのだ。したがって、前原氏をはじめとする悪徳8人衆の人々は、民主党を離党して自民党に入党するのが正しい選択である。
マスメディアが正統民主党を徹底的に攻撃し、悪徳民主党を全面支援するのは、マスメディア自身が米官業の利権複合体の手先であるからに他ならない。
2006年の代表在位時の前原氏の党運営は拙劣を極めるものだった。政権交代実現後、鳩山前首相から大臣就任の恩恵を授かったが、前原氏の歩んだ道の上には失策しか残されていない。
八ッ場ダムの中止宣言とその後の撤回、日本航空の破綻回避方針表明とその後の破綻処理、中国人漁船船長の逮捕・勾留とその後の釈放、など政治能力の欠如を示す実績しか残されていない。「政治とカネ」の問題では、適正な検察捜査さえ行われるなら、逮捕・起訴・有罪は間違いない状況が明らかにされている。
しかし、米官業による日本政治支配を打破し、主権者国民が支配する日本政治実現を目指す正統民主党が民主党の実権を奪還しないように、マスメディアは正統民主党を攻撃し続け、悪徳民主党を不自然に絶賛しているのだ。
マスゴミが絶賛する対象が明白な力量不足を露呈する前原誠司氏であるという現実は、悪徳民主党の人材不足を明白に物語っている。
民主党内では、小沢一郎元代表、鳩山由紀夫前首相、輿石東民主党参議院議員会長の三名が、ニュートロイカを形成している。このニュートロイカがニュー民主党の後見役になることが期待される。
この三名が結束して正統民主党の代表選候補者をただ一人に絞り込めば、民主党代表選の大勢は一気に決することになる。正統民主党の各議員は、個人的な利害得失ではなく、公共の利益の視点に立って、正統民主党候補者の一本化に積極的に協力するべきだ。
前原氏は民主党国会議員全員に呼びかけて決起集会を開催したが、参加した議員は37名にしか過ぎなかった。メディアが騒ぎ立てるのとは対照的に、本当の実態は泡沫候補の一人にすぎない。
正統民主党が民主党の主導権を奪還する場合、悪徳民主党が国会での首班指名選挙で造反する可能性がある点には留意が必要である。その場合には悪徳民主党議員は除名されることになる。彼らの行き先は自民党以外にない。
こうなれば、一気に政界大再編が始動することになる。それは政治を主権者国民にとって分かりやすいものにするうえで望ましいことである。
日本政治は米官業による支配を目指す利権複合体勢力と主権者国民による支配を目指す主権者国民勢力とによる二大政党制に移行することになるわけだ。
この場合、中期的に主権者国民派が拡大してゆくことは間違いない。したがって、国会議員への働きかけによって、正統民主党が衆議院過半数を確保することは十分に可能である。
マスゴミは正統民主党のニュートロイカである小沢氏、鳩山氏、輿石氏の言動をねつ造して誹謗中傷する記事を書き続ける。小沢氏などが影響力維持や幹事長ポスト確保のために、利害得失だけで動いているとの誹謗中傷だ。
しかし、真実はまったく異なる。ニュートロイカの各氏の言動には、明確な政治理念と信念に支えられた一本の筋が明確に通されている。利害得失だけで動いているのは、小沢一郎氏にこれまでの非礼を謝罪することもなくすり寄って門前払いされた前原誠司氏などの悪徳民主党議員である。
主権者国民はマスゴミが流布するねつ造情報に惑わされることなく、正統民主党による政権奪還を全面的に支援するべきである。
俄然面白くなったこの国の政局
天木直人
2011.8.24
amaki
前原の突然の民主党代表選参戦で、この国の政局は俄然面白くなってきた。これはもちろん皮肉だ。そして政治が面白くなったとは言わない。
この国の政治はしょせんくだらない。反国民的だ。くだらない政治の下でうごめく政局が面白くなったとい言っているのだ。
前原の参戦によって代表選は前原の勝利で決まりだろう。しかしそれによっても民主党の安定政権はおぼつかない。
前原の参戦によって、小沢が推す候補との対決選挙となれば民主党の分裂は残ったままだ。もっと分裂する。
だからたとえ前原が勝って民主党の結束は望めない。もっともそれによって小沢新党の流れが加速すれば、それはそれで面白い。
その一方で小沢が最後に前原を推すという情報がここにきてまことしやかに語られる。つまり仙谷が小沢に頭をさげるということだ。小沢が勝ち馬に乗るということだ。
しかし、骨肉の対立をしてきた小沢、反小沢が手打ちできるのか。常識的にはありえないが、民主党が政権を維持したいと考えるのならば、その「まさか」もありうる。
自民党政権への逆戻りだけは許さないと考える連中や、政権にしがみつきたいと考える社民党や連合、国民新党はそれを望むだろう。
下手な対立候補を推して前原に負けるよりも、影響力を残して民主党を立て直したいと小沢が考えればそれもありだろう。
しかし、その場合でもこの国の政治はよくならない。 国民生活は救われない。政策がねじれるからだ。国民の間にもやもや感が残るからだ。
私が望むのはこの国の「政治の先鋭化」である。すなわち政官財米の側に立つ政治か、一般国民の側に立つ政治かの選択を国民にわかりやすく提示できる「政治の先鋭化」だ。
そしてその一方に小沢が立つことだ。それに向かって始まる新党設立と政界再編こそ正しい政治に向かっての、皮肉でなく本当に面白い政局なのだ。
私が小沢一郎に今度の代表選にはかかわるな、裁判で無罪を勝ち取ることを優先させろと繰り返し言っていることは、その時にそなえて政策力を磨け、覚悟を決めろ、ということだ。
前原の参戦ですべてが明らかになってくる。小沢もまた試されることになる。政局がおもしろくなってきたという理由がそこにある。
民主党代表選
Q&A
2011.8.21
tokyo
菅直人首相(民主党代表)の後継を選ぶ党代表選。同党は衆院で過半数を占めるため、代表選は事実上、次の首相を決める場となる。どんな仕組みなのか、おさらいしてみた。
Q 代表選のルールは?
A: A 立候補できるのは党所属の国会議員だけで立候補予定者は国会議員の推薦人二十人以上の名簿を添えて告示日に届け出る。菅代表が任期途中に辞任するから、国会議員だけが投票する両院議員総会で新代表を選ぶ。
Q 代表選は党員・サポーターも投票に参加するのでは?
A: A 任期満了に伴う代表選は党員・サポーターも参加する。任期途中の場合も同じ方法は可能だが、党規約には「任期途中で代表が欠けた場合、両院議員総会で代表を選出することができる」との規定がある。党員・サポーターを参加させると、有権者の確定や投票案内の発送など事務作業に時間がかかるため今回は政治空白を避けたい党執行部が両院総会方式とした。
Q 投票の方法は?
A 投票権のある国会議員三百九十八人の投票で、過半数を制した候補が新代表に選出される。三人以上が立候補し、一回目の投票で過半数を獲得した候補がいなかった場合、上位二人による決選投票で勝者が決まる。
Q 民主党議員は四百人以上いるのに、なぜ三百九十八人なのか?
A 民主党籍を離脱している衆参両院議長にも投票権はあり、本来なら衆院三百一人、参院百六人の計四百七人に投票権がある。しかし、小沢一郎元代表や田中真紀子元外相ら九人は菅内閣に対する不信任決議案の採決で造反したことなどを理由に党員資格停止処分を受け、投票権を失っている。
Q 民主党には多くのグループがあるが、その動きが勝敗を左右することになるのか?
A: A 民主党のグループは自民党の派閥に比べ、結束は弱い。一人の議員が複数のグループに入っていたり、どのグループにも属さない議員も多い。グループの数合わせで勝てる保証はない。グループと距離を置く議員の動きも勝敗に大きな影響を与える。
Q 新代表の任期は?
A 本来は二年だが、菅代表の残り任期となるため、来年九月まで。一年後には再び代表選が行われる。
Q 代表選を見直す動きはないのか?
A 首相(党代表)がたびたび交代することへの批判を受け、次回以降の課題として見直しが検討されている。具体的には(1)任期を撤廃し、党所属国会議員の過半数が求めた場合、代表選を行う(2)任期を一年延ばし、三年とする-案がある。
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