ラベルの「ボレロ」の作風は脳疾患の影響か?
2004年 07月 02日

ラベルは1927年、52歳の時に原因不明の進行性痴呆症にかかり、話す能力、書く能力やピアノを弾く能力を徐々に失っていったのだ。最後に作曲したのは1932 年で、演奏会は1933年が最後になり、1937年12月、彼は永遠の眠りについた。
それ以来、彼の病気をめぐっては神経学者の間で喧喧諤諤、さまざまな見解がなされていた、アルツハイマー病説が有力であったが、この論文の著者であるポール・ブローカ研究センターのBoller氏は、症状が現れた年齢が低すぎ、記憶力、自己認識力や社会的技能も十分に保持されていたことから、原発性進行性失語症と大脳皮質基底核変性症であった可能性が高いと推察し、アルツハイマー説を靴が覆している。(前者は脳の言語中枢を徐々に破壊し、後者は患者の運動制御を阻害する。)
ラベルの病気、特に失語状態は、主に左脳によって処理される能力が関係していた。音楽的才能に関係する領域は、脳全体に分布しており、音の高低、メロディー、ハーモニー、リズムは、それぞれ別々の領域で処理されており、ラベルの晩年の作品である「ボレロ」や「左手のためのピアノ協奏曲」には、左脳が機能低下し、音色を処理する右脳の影響が相対的に強くなり始めた頃の影響が現れているとBoller氏は言う。
ボレロは、2種類のテーマが、それぞれ8回ずつ反復して演奏されるという単純な構造となっている。ところが別の楽器の演奏で1つのメロディーを重ね合わせる部分が30 ヶ所、そのように合奏する楽器の組み合わせは25通りもある。ラベル自身もボレロについて「管弦楽を織り合わせた作品だが、音楽的内容はない」と評しているのだ。
イタリアの国立アルツハイマー病研究看護センターでアルツハイマー病を研究する Frisoni氏は「Boller氏らの仮説には魅力を感じるし、これまでの研究成果とも整合しているが、ラベルの晩年の作風の原因について確実な答えを得ることはおそらく不可能だろう」とコメントしている。
ラベルのボレロと脳疾患の相関関係があるとの説は可能性が高いものの、確証はされてはいない。
('-'*)あらためて『ボレロ』を聞いてみよう!

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