★迷信?「13日の金曜日に交通事故は増える?」~(・・?))
2006年 03月 26日
「13日の金曜日に交通事故は増える?」
(nikkeibp)
西欧では、未だに「魔の金曜日」を不吉に思う人が多い。また、月の満ち欠けと人の生死の関係を信じる人が、医療従事者の中にも少なくないという。実際、国際的な医学文献データベースのPubMedで検索すると、ヒットする論文の数に驚く。
そこには、「迷信を否定するための研究をまじめにやるなんて」と一笑に付すことができない、まじめな動機と目的があるような気がする。意外なことに、この種の論文を多く掲載しているジャーナルの1つにBritish Medical Journalがある。
13日の金曜日には交通事故が52%も増える可能性を示した1993年掲載の研究成果(1)は、続報を生んだ。13日の金曜日の交通事故死はそれ以外の金曜日に比べて有意に多く、調整済みリスク比は男性1.28、女性2.25、とした論文は、迷信に対する不安から特に女性の交通事故死が増えると説明している(2)。
これに反論する論文(3)は、(2)と同様にフィンランドで調査を行い、交通事故の発生件数と死者数を比較している。しかし、女性の方がリスクが高いことを示す結果は得られなかった。(2)については、標本サイズが小さい上に、同乗者の死亡を除外しておらず、交絡因子の調整も不十分――と批判している。それでも、迷信深い人が13日の金曜日に運転を避けた結果である可能性は否定しきれない――と結んでいる。
迷信に起因する不安解消を目的として行われた研究もある(4)。米Temple大学の研究者たちは、扁桃摘出術を受けた小児の術後の出血の頻度を調べた。13日の金曜日または満月の日に手術した患者と、赤毛(赤毛の子供は出血しやすい、という迷信があるのだろうか?)の患者に、出血リスク上昇は認められなかった。
著者は、これで、迷信を信じる患者やその家族に、術後の出血リスクについて十分に説明し、安心して手術を受けてもらうことができる――と述べている。
日本にも、13日の金曜日には、行動パターンを変える人がいるかもしれない。が、満月まで気にする人はいないのではないだろうか。13日の金曜日だけでなく、西欧では昔から、月の満ち欠けと、生死を含む生物の様々なサイクルの関係を信じる人が多い(参考記事:満月の夜には人も凶暴になる!?)。
もっとも日本では、「13」でなく「4」という数字が毛嫌いされている。病人の見舞いにシクラメンを持って行ってはいけない――というように、語呂合わせを気にする習慣もある。こうした習慣を研究対象にするかどうかは別として、迷信が、患者と医療従事者に及ぼす影響を完全に否定することはできない。
オーヘンリー「最後の一葉」の肺炎の少女を例に出すまでもなく、患者の精神面は、病気の進行や予後に大きな影響を及ぼす。患者の話を親身になって聞き、不安を解消するためのデータを得ようと行われた研究も、これらの中には存在する。得られた結果は、少なくとも一部の患者や医療従事者に安心をもたらし、アウトカム向上に役立つのではないかと思う。
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