★宇宙でのおトイレ事情・・・おしっこはまいちゃうって・・ホント
2004年 11月 24日
(スチュアート ヘンリ著『トイレと文化考』文春文庫)
(『世界史なんてこわくない』より)
アポロ計画当時の宇宙船の中には便所がなく、小便や大便はそれ専用の袋に入れ、消毒剤とともに密封して地球に持ち帰っていた。大便の場合は、幅が20センチくらいで、縁にはオシリにピタッと貼りつけるための接着剤がついている大便回収袋をあてがい、ひり出すのだそうだが、重力がないということはしゃがみ式も腰掛け式も関係なく、どこに力を入れてふんばっていいのかわからずに相当やりにくいのだそうだ。
この回収袋は所定の場所に置いておくことになっていたのだが。読者の中にはよからぬことを思い描いた方もいることだろうが、そう、そのとおり、排泄したあとの始末が悪くて回収袋の口があいてしまい、無重力の船内をフワフワと漂いはじめたときもあったというから悲惨である。
振り向いたところが、目の前を大便が漂っていたなんてことになったら。第三者だから笑える話である。このときの宇宙船は1965年12月4日に史上初のランデブーに成功したジェミニ7号。飛行士たちはどうすることもできなくて、地上に帰り着くまでウンコとごいっしょしたそうだが、船内でのすさまじい会話内容はオフレコだとか。
小用のほうは、いまのスペース・シャトルでもそうなのだが、袋にするなり、吸い取るなりして処理するものの、溜まってくると宇宙空間に捨てていた。はじめて地球をまわる軌道を3周したマーキュリー宇宙船の乗務員ジョン・グレンは宇宙船のまわりにキラキラと輝く無数の宇宙ボタルのようなものが飛んでいると報告して、地上の宇宙センターの人たちを驚かせたことがあったが、実はこれ、宇宙船から捨てたオシッコだったのである。
真空で零下の宇宙空間では尿は細かな氷のつぶになって飛び散り、それに太陽光線があたってダイヤモンド・ダストのように輝いていたことが、あとになってわかった。しかし、考えようによっては宇宙空間では水分というのは貴重な物質である。たとえ宇宙であろうと、人が生活する限りいろいろなものが汚水という形で出るのだから、少しの無駄もないようそれらを完全に浄化してきれいな水をつくる研究が進められている。
宇宙には汚物を分解してくれる空気も微生物もないのだから、尿は尿のまま永遠に宇宙空間に漂い、汚物のままであることに変りはない。すでにイオン交換法などによって、尿を飲料水に浄化するということは実現しているのだが、問題なのは、たとえ清浄な水とはいえ、もとは尿だったということに抵抗感をもたないかどうかということなのだそうだ。
現在のスペース・シャトルには中ほどのデッキにユニセックス用(男女兼用)のトイレが備えられている。トイレという名の機械といったほうがいいかもしれない。宇宙ではすべての物体が浮遊し、「もの」はあたったときの力そのままではね返るという作用反作用の関係が成り立ち、小便が出るときの勢い、大便をひるときの勢いがすべて人体に返ってくるために体のほうが飛び上がってしまうという苦労がある。
そこでまず、所定の位置に腰掛けたならシートベルトで体を固定しなくてはいけない。 大便のほうは、所定の位置に腰掛けたならスイッチを入れて待機。いざ出た途端に下に吸い込まれ、高速回転をする電動カッターによってこなごなに砕かれて乾燥、貯蔵される。小便は便座の前方のほうにある尿回収装置から出ているホースに個人個人のカバーキャップをかぶせてから排泄器官に装着し、スイッチを入れる。
キュッと軽くひっぱられる感触があって、実際に排尿がはじまると自動的に吸引力が高まり一滴残さず、汚水タンクに溜められる。前に書いたように、このタンクがいっぱいになると中身を船外に捨てるわけだ。 現在のカバーキャップはどうなっているか知らないが、 ところで、
宇宙トイレは連続しては使えない。以前は一人が使うと15分近くも、最近のものでも数分は待たねばならず、お腹でもこわそうものなら大変なことになってしまう。
これも余談だが、最近は女性宇宙飛行士も活躍しているが、彼女らはDACT(ダクト)とよばれる液体回収用のトランクス(早い話がオムツ)を身につけるとか。女性は膀胱からの尿管が短いために遊園地のジェット・コースターなどに乗ってもオシッコを漏らしやすいというが、それは宇宙船でも同じこと。発射時や宇宙からの帰還の途上で大気圏突入の際には、強烈なG(重力)で漏らしそうになるのだそうだ。
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